令和7年10月1日

避難訓練で集会所等に避難した代表の方へ

常磐小学校区自主防災会

会長横山禎三

 

8:50より集会所等に集まりますと、炊出し訓練の給食を取りに行く時刻11時ころまで、「どのように過ごすか?」との問い合わせがあります。この答えは、訓練として「避難所利用者登録票」の提出を求める作業があり、協働作業でお茶などの飲み物を用意する時間も必要ですから、雑談などをして過ごすようお願いしたいと考えています。

しかし、どうしても「たいくつ」となれば、自主防災会より、お伝えしたいことも沢山ありますので、待ち時間に下記を読み上げてください。

話題づくりに役立てていただくようお願いいたします。

こちらは、常磐小学校区自主防災会です。

避難訓練の皆さん、おはようございます。朝早くからご苦労様です。

皆さんにお伝えしたいことが沢山ありますので、雑談を一休みして静かにお聞きください。

 

【女性部の方が、炊出し訓練に頑張ってくれていますから、皆さんも給食まで待ってください】

皆さんより少し早く出発して、今、皆さんの自治会の女性部の方々が、炊出し訓練に行っています。

この炊出し訓練は、常磐でも初めてのことなので、750食の「おにぎり」と「豚汁」ができるかどうか必死になって取り組んでくれています。

米250合をたいて、「おにぎり」の大きさを110グラムにしたら727個とれるけど、この大きさなら一人2個として363人分しかできない、とか、大きく140グラムにしたら食べた感じもあって500人分できる、とか、迷いながら本日の本番を迎えています。

女性部の方々は、皆さんが避難しているからこそ頑張ってくれていますので、皆さんも、昼食が届くまで待ってあげてください。

 

 

【集会所や自治会館に避難された皆さんには、「避難所利用者登録票(ひなんじょ りようしゃ とうろくひょう)」の提出が、訓練のひとつとなります。 では、なんで、これが必要かについて、お話します。】

 大きな地震は、激甚災害に指定されることが多いです。この場合、国からさまざまな支援を受けますが、その支援は、すべて国民の税金で賄われます。税金を使うためには、支援対象者の名簿が必ず必要となります。

このことを知らない人が多いです。

 避難所に支援物資が届けられる場合、発災直後に届けられる物資は、プッシュ型支援といって、とにかく最初は、何でも役所に送ってきます。激甚災害とみなすことができたら、必要と予想した物資を一方的に送ってきます。

 ところが、しばらくすると、必要でない物資があふれて、役所の職員さんは、不要な荷捌きに労力をうばわれます。それに反して、本当に必要な物資が何なのか、必要量がどうなのか、職員さんより上には伝わらず、結局、避難所は、ほったらかしになります。これが、受援体制(じゅえんたいせい)の遅れです。

 ですから、役所が実態を把握し、本当に必要な支援を求めることができるようにするなど、役所が動けるように、発災直後より、避難者の名簿から作成しなければならない訳です。

 この名簿は、指定避難所に限らず、在宅避難や、集会所などに避難する個別避難にも必要です。地元の被災者データをそろえるのは、自治会長さんが歩いて収集する場合が多いと聞いています。

 皆さんは、こうした名簿の元となる「避難所利用者登録票」を提出する協力をしましょう。

 

【次は、なんで地震を想定した訓練が大切かという話です。】

最近の異常気象は、集中豪雨や突風により、浸水、建物崩壊など多くの被害をもたらせます。こうした、風水害に備えることも大切ですが、風水害の場合は、必ずといっていいほど、行政の助けが入ります。救命救助や避難誘導などが必ず入ります。罹災証明書なども比較的早く準備できます。なぜなら、助ける側が被災していないからです。

ところが、大きな地震の場合は、そうはいきません。風水害と地震は、対策を分けて考えないといけません。

地震の場合は、助ける立場となる人も地震の被災者になることを想定しなければなりません。そのため、行政の助けがないと思ってください。国も県も、そのように想定してくださいと言っています。

なぜなら、想定している地震は、南海トラフを震源とするきわめて広い範囲、東海地方から東南海、南海、日向灘に及ぶ巨大地震を想定しているからです。震度6弱以上の想定は、24府県に及びます。

こうなると、助けに行く行政の人々自身も被害にあいます。そのうえ、自衛隊などが動いたとしても、津波被害の大きい高知県や徳島県の救済が優先され、比較的被害の軽い香川県などは後回しとなります。何の助けもない期間は、約3週間と言われています。これは、香川県の被害想定を作り上げた香川大学の長谷川特任教授が特に強く言っています。

また、余震は、何日にもわたり長く続くことを、皆さんには経験がありません。テレビなどで避難所に大勢が生活している様子がみられますが、みんな自宅に帰りたいけど、余震がこわくて自宅に入れないのです。

このように、誰も助けに来ないのが南海トラフ地震です。

どうしても自力で助からないといけません。

 

【次に、その南海トラフ地震は、いつ来るかという話です。】

過去の南海トラフ地震は次のとおりです。

1605年に慶長(けいちょう)地震(M7.9)

徳川家康の時代【津波地震】   その102年後の

1707年に宝永(ほうえい)地震(M8.6)

徳川綱吉の時代

【遠州灘から四国沖、東海と南海が連動しました】

地震の49日後に富士山が噴火しました(宝永噴火)

その147年後の

1854年にふたつ

安政東海地震(M8.4)

安政南海地震(M8.4)        その90年後の

1944年に昭和東南海地震(M7.9)      更に2年後の

1946年に昭和南海(M8.0)

このように90年から150年の周期で南海トラフが割れています。

 

高知県室戸の漁師さんたちは、昔から、室津港(むろつこう)の地盤の上下を測ってきました。漁師生活に直結するからです。

1707年には、1.97mの隆起がありました。

1854年には、1.21mの隆起がありました。

1946年には、1.10mの隆起がありました。

政府の地震調査委員会は、南海トラフ巨大地震について、この室津港(むろつこう)の隆起量をもとに、複雑な計算により、次の地震までの間隔を割り出しました。これは「時間予測モデル」と言います。

この計算結果は、2035年です。

政府が公表する言い方は、「今後30年以内の発生確率は80%程度」と言います。

なぜ2035年と言わないのでしょうか?

地震の予知というのは、何月何日何時何分に、どこで、どの大きさで、というのが予知ですから、こんなことは予知できません、不可能です。

ですから、政府としては、発生確率80%と表現しています。

 

さて、政府の言い方は、分かりにくい。誰もがピンとくる言い方にしないといけないと言って、講演に引っ張りだこになっている人がいます。

その人は、次の発生は、2035年と計算でき、複雑系推計計算だから前後5年の幅があるとして、2030年から2040年の間に発生すると言っています。

その人とは、京都大学名誉教授 鎌田浩毅(カマタ ヒロキ)さんです。経済産業省のOBで、京都大学での「地質学講義」で人気ナンバーワンの教授でした。現在は、定年退職し、愛知県を中心に全国の県や市で講演活動を行っています。

常磐地区自治会協議会のホームページに、カマタ教授の愛知県での講演ビデオを掲載していますので、興味のある方は、ホームページの動画のページを見てください。

 

ところで、今年5月には、島崎邦彦東京大学名誉教授のグループは、2035年は誤りで、2030年が正しいとした研究成果を学会で発表しました。

もし、こちらが正しければ、前後5年の幅を考えると2025年も予知に入ります。急に困ったことになりました。この学会発表がなければ、今少し安心でいられた訳ですが、自主防としては、2030年から2040年説より5年ほど早くなることにも留意しつつ対策を進めねばなりません。 

 

そして、政府の地震調査委委員会は、つい先日(9月28日報道)、さらに地震発生確率を見直しました。「30年以内の発生確率は、60~90%程度以上」としました。確立を高める一方で、元データの誤差をより多く反映させて、確率の幅を大きくしました。同時に計算手法が異なる確率20~50%も併記することとしました。さて、こうなると世間一般には理解できません。自主防としては、やはり具体的に2030~40年を中心に据え、且つ、いつきてもおかしくないと留意します。

 

【次に、その南海トラフ地震の、大きさの話です。】

政府は、今年3月に南海トラフ地震の被害想定を見直しました。全国の死者数を、最大29万8千人と想定しました。地震と津波で29万8千人が亡くなると言っています。そして、政府は、この死者数を今後10年間で8割削減する目標を設定しました。29万8千人を6万人程度までに抑える目標を立て、住宅の耐震補強などの対策を進める方針です。

全壊とか焼失建物は最大想定235万棟の半減を目指します。

香川県でも、被害想定を見直し、本年9月2日に公表しました。死者数の最大は7800人であることなど人的な被害想定を公表しました。

そのうち観音寺市は、死者数最大1100人、負傷者2600人、建物全壊7800棟、避難所への避難者17000人、避難所外避難者10000人です。

 

このように、南海トラフ地震最大クラスの被害想定は、広域複合災害であり、何の対策もなければ、日本の経済的損失総額も292兆円という復活が困難になるほどの大きさです。経済復興の見通しが立たないほどのダメージなら、海外諸国は、日本を見放します。壊滅的な国には、援助も投資も入ってきません。この為、日本政府は本気で動いています。政府にとっては、2011年3月11日東日本大震災で無策となった反省がありますのでなおさらです。政府は、当初、複数の震源域について個別に長期評価していましたが、それがすべて連動し、結果的に南北500Km・東西200Km・深さ5~40Kmという巨大震源域となったことは、自然の驚異とは言え、政府として反省すべき点は多くあります。

我々自主防は、南海トラフ地震最大の想定が外れることを期待しますが、多くの専門家に、3回に1回の大きい順にあたると言われると、最大クラスを基準に対応しないといけません。

また、自主防災会として自覚しないといけないことは、空振りを恐れないことです。そして、現状では、空振りを恐れるほどの準備をしていないことを自己認識せねばなりません。例えば、各自治会より、手順別訓練担当者を派遣願っていますが、任命された方一人の負担は、年間で5時間以内です。自前の備蓄は、これまで、補助金約2百万円を充当など、行政の援助を受けたものとなっています。したがって、常磐地区防災計画書に記す程度の準備は、平然として実施すべきと考えています。

  

 

では、皆さん個人にできる対策として、観音寺市総合防災マップに記載の行動マニュアルを読み上げます。改めてになるかと思いますが、ご参考になさってください。

 

【地震発生から避難への行動を列挙します。】

 

当初は激しい揺れ!

●まず、身を守る

机の下などに避難。あわてて外へ飛び出さない。

●素早く火を消す

危険が伴うので無理はしない。

●非常脱出口の確保

ドア・窓を開ける。

 

揺れがおさまったらまず火の始末

●火元の確認

火が出ていたら、あわてずに初期消火。

●家族の安全確認

倒れた家具の下敷きになっていないか確認。

●靴を履く

ガラスの破片や散乱物から足を守る。

 

余震に注意しつつ隣近所の安全確認

●隣近所への声掛け

けが人、行方不明者がいないかを確認。

●近所に火が出ていたら初期消火

大声でしらせて、消火器、バケツリレーなど、

近隣で協力して消火を。

●余震に注意

 

デマにまどわされず、正確な情報を収集

●正しい情報を聞く

ラジオやテレビ、防災行政無線の情報を聞く。

●電話はなるべく使わない

安易に電話をかけることは避け、

安否の確認は「災害用伝言ダイヤル」で。

●家屋倒壊の危険があればすぐに避難!

避難するときはガス栓を閉め、ブレーカーを落とす。

 

避難後は助け合いの心で行動を

●助け合いの心が大切

 

力を合わせ消火活動、救出・救護活動。

●水・食料は備えているもので

一週間分(できれば3週間分)の飲料水と食料は備蓄しておく。

●壊れた家には入らない

無理をして、二次被害を起こさない。

●災害情報・支援情報の収集

引き続き余震に注意。

 

【住まいの安全対策を列挙します。】

 

家の中の安全対策

 ●家具を安全に配置

人の出入りが少ない部屋に家具をまとめる

寝る部屋の家具は体の上に倒れない位置に

 ●家具の転倒や落下を防止する措置

家具と壁や柱の間に空間をつくらない

家具の転倒や落下防止措置(補助金制度アリ)

 ●通路や出入口に荷物を置かないように

 ●窓ガラスに飛散防止フィルム

 

家の外の安全対策

 ●屋根

瓦のヒビ割れ、ズレ、ハガレの補強(補助金制度アリ)

アンテナの固定

 ●ベランダ

常に整理整頓

植木鉢は落下しない位置に置く

 ●プロパンガス

鎖による固定

 ●ブロック塀

 

耐震診断

昭和56年5月31日以前建築の住宅の場合は、補助金制度アリ

耐震改修工事

本格的な耐震改修(最高100万円まで全額補助:R5年現在)

簡易な耐震改修(最高50万円まで全額補助:R5年現在)

耐震シェルター等を設置(最高20万円まで全額補助:R5年現在)

 

【次は、常磐小学校避難所で開設訓練について説明します。】

 

すでに言ったとおり、大地震の場合は、市役所の職員さんも来ることができません。3週間は公的な支援がないものと覚悟せねばなりません。

この想定で、開設訓練をしなかったら、常磐小学校には千人規模の避難者が押し寄せ、断水したトイレは、数時間のうちに汚れて使えなくなります。

発熱している避難者と密着することもあり感染症が蔓延します。

毛布など備蓄品も、近くにある市の備蓄倉庫にあるとは限りません。冬ならば災害関連死も出かねません。犯罪の犠牲者も出ます。

ですから、開設の初動で

・避難所建物の安全点検

・断水時トイレの設置

・感染症隔離

・居住空間の確保

・受付の実施     これが重要です。

また、一般的な開設訓練をしていても、被災時に訓練経験者が、避難してこないことも考えられます。訓練経験者がいなければ、何もできません。

そのため、常磐地区では東京都文京区の取り組みを参考にして、「手順書方式」の避難所開設訓練を行っています。この方式の良いところは、誰が避難者になっても、手順書を基に多くの避難者が協力できることです。

手順書があれば、理論上は、避難者全員が訓練未経験でも避難所を開設できます。ただ、実際には開設リーダーが何人か必要ですし、できれば手順ごとの経験者も少しはいてくれると安心です。経験者が増えれば増えるほど、初動の対応がぐっと早くなります。

この避難所開設訓練は、令和4年度に第1回、令和5年度に第2回を実施して、今回が第3回目になります。3回の訓練では、毎回、違った人を自治会から派遣してもらっていますから、経験者も少しずつ増えています。また、令和4年度以降に自治会長を務められた方々には、開設リーダーとして訓練に参加していただいていますので、リーダーの層も厚くなってきています。  

 このように、毎年少しづつ訓練を進めていますので、皆様もどうか今後ともご理解とご協力をお願いいたします。

以上